おもひでぽろぽろ/感想〈高畑勲が描くリアルについて〉

ジブリ作品の『おもひでぽろぽろ』を観た。高畑勲が監督をする作品をちゃんと観るのは初めてかもしれない。

観てる途中、自分の中でいろいろ考えが張り巡らされた作品だったので久しぶりに映画ブログを書きたい。

おもひでぽろぽろ』(1991) スタジオジブリ/監督:高畑勲

可愛らしい題名なんだけど全体的な印象としてはどこか重く心がそわそわする作品だった。なんでだろうって考えたけど、たぶんあまりにもリアルが追究されているから。

まず言っておきたいのが、時代性なのか、主人公の家族のあの暗~い雰囲気。姉妹たちのやり取りは明るく三姉妹らしさが出ているが、問題はあのお父さんだ。ザ・現代っ子の私からすればあれは見るに堪えなかった。

作品の中盤あたりで主人公のタエ子をビンタするシーンがある。あそこで観るのをやめてしまおうかと思うぐらいツラいシーンだった。

家族の食事のシーンでも「メシ」と一言だけ発してお母さんにご飯をよそってもらう場面があった。もしかしたら私がその時代の人間だったらすんなり受け入れられたかもしれないが、あまりにもリアルに描かれている「家父長制」にはお手上げだった(笑)

でも私が感じたあの救いようのなさを、後のトシオのセリフが救ってくれた(そして最後まで観れた)

タエ子の苦い思い出話を聞いたトシオはこう言う

「親父っていうのは東京も田舎も同じようなものだったんだな」

 

高畑勲がなぜ厳格な昭和の父親像をはっきりと描いたのか分からないし、私が問題意識を持ったように視聴者に対して問題提議をしたい訳ではないと思うけど、「親から逃れるという自由」みたいなエッセンスを感じ取った。

 

タエ子は自分がビンタされたことに対して「叩かれたことは一回だけ、一度だけだとあの時どうしてって思っちゃう」と言う、

たしかにそうだ。タエ子は大して悪いことをしたわけじゃないと思う。いつものようにワガママ節を発揮させ自分のエナメルのバッグが無いからって家族のお出掛けについていかないと駄々をこねる。年相応で三姉妹の末っ子がする行動と思う。玄関に置いてかれたタエ子は「けどやっぱり行く!」と靴下のまま飛び出した。それを見たお父さんが思わずタエ子をぶつ。お父さんもハッと「やってしまった」という後悔が垣間見える表情になる。

考えても考えてもあのシーンは何だったんだろうと記憶にこびりつく

 

おもひでぽろぽろ』小5のときの話をトシオとナオ子にするタエ子



タエ子がトシオにする思い出話でもう一つ印象深いものがある、

割り算の話だ。

 

「分数の割り算をすんなりできた人は、その後の人生もすんなり行くらしいのよ」

 

最初に台詞を聞いたときにどういうこと?って思ったけど

タエ子は小5のとき算数でひどい点数を取った。分数の割り算のテストでいまいち「分母と分子をひっくり返して掛ければいい」っていうことがしっくり来てなかったらしい。

「2/3のリンゴを1/4で割るってどういうこと?」

 

そんなこと考えなくても「分母と分子をひっくり返して掛ければいい」てことさえ分かっていればすんなり解けるもの。理屈とかいちいち考えなくても公式さえ覚えてれば大体はうまくいくもの。人生というのも小難しく考えるより「公式」にならって効率よく進めば「すんなり行く」ものなんじゃないだろうか。台詞が心を刺す。

 

 

また小5のときの話で生理についての話がある。

保健の授業で女子だけが集められてが生理の話をされ、女子だけの秘密だと決めていたのに「りえちゃん」が一人の男子に話してしまう。

それから男子たちは「生理」というからかいワードを連発するんだけど、ある男の子が

「あ、生理がうつる!」

とドッチボールの授業でりえちゃんに向かって言う。

隣のタエ子は何とも形容しがたい表情で居るんだけれども、りえちゃんは「生理がうつるだって、バカみたい」と笑いながら受け流す。

 

割り算の話でも「りえちゃん」は特段算数が得意だったわけではないが、素直に分母と分子をひっくり返して(27歳にもなるのに結婚していないという)タエ子とは違い二児のママである。

 

おもひでぽろぽろ』(1991)スタジオジブリ/監督:高畑勲

正直この映画は「なんだかなあ」みたいなモーメントが多い。けれども現実という冷然としたものを淡々と映し出しているわけではなく、前向きなメッセージも在る。

 

「青虫はさなぎにならなければ蝶々になれない、

さなぎになんか ちっともなりたいなんて思っていないのに」

 

「あの頃をしきりに思い出すのは、私にさなぎの季節が再び巡ってきたからなのだろうか」

 

 

27歳のタエ子は小学校5年生の11歳だった自分を何回も呼び起こす。

普通青虫は一回しかさなぎになれないし、一回しか蝶々になれない。

けれど人は何度でもさなぎになれるし、そこから蝶になれる。何度でも「羽ばたきなおす」ことができるのだ。

 

いや高畑勲まじ良い事言うやん。てか伝え方が良い。

 

そう理解した後にあのエンドロールと共に映し出される「現在のタエ子」と、思い出というメタファーとして現れる「小5のタエ子」のシーンをもう一度観ると心のそわそわが消えてジーンとくるものがある。

 

 

オムニバス形式っぽい感じでタエ子のエピソードが回想されるこの作品だが、どれも「現在のタエ子」の抱える問題に通じていて、その描写やカットが秀悦なものだった。ストーリーの地味さと時代設定からなのかジブリ作品の中ではあまりファンがいない作品だけど、現代人の私たちでもいろいろ考える要素を多く含まれていた『おもひでぽろぽろ』に私はすっかりファンになってしまった。

 

おもひでぽろぽろ』(1991) スタジオジブリ/監督:高畑勲



watashi no おすすめ映画 pt.2

青春映画(coming of age movies)の良さを考えてみた。

昔から青春をテーマにした映画にとても惹かれます。そういうラインで好きなのは"The perks of being a wallflower"、"20th Century women"、"Clueless"です。こういう映画の付き物である恋愛的な要素にトキメクのも楽しいが、なにより、肉眼で目にしたらキラキラしていなくてもレンズを通してアーティスティックに描かれる主人公の人生に共感したり、何か教訓のようなものを吸収したりする感覚が楽しい。素直に観ているときに楽しいなと思える映画っていいよね。色々考えさせられる映画もいいけど、私の思う映画の根源的な存在意義がある映画は大雑把な表現だけど「青春映画」だなあと感じます。

 

 

レディ・バード』/監督:グレタ・ガーウィグ

【予告】https://www.youtube.com/watch?v=yBJdLBn8d5k&pbjreload=10

 この映画は好きがいっぱいで紹介というよりただひたすら私のこの映画に対する想いを伝えるブログになりそうだ。

息が止まるほど胸がいっぱいになって気が付いたら涙出るぐらいドキドキする映画は『レディ・バード』ぐらいかなと思う。

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監督についてなんだけど、女優をしていて("20th Century women"にも出てる)監督になって初めて製作したのがこの映画。処女作でこれ。Mind blowingだ。 

自分自身このバイアスが若干根付いてしまっているのに嫌気がさすけど(not trying to make a statement here)

監督で成功するのはほとんど男性。映画祭などでの授賞式でも壇上でトロフィーを手に持ってスピーチをあげる制作者とかも男性の方がイメージが浮かびやすい。そういう傾向?があるからなのか私はメイキング映像とかで俳優陣に指示している監督さんとか見てもあまり惹かれはしなかった。なんか遠いような存在だから?うまく言えないけど

だけど、『レディ・バード』のメイキング映像を見て心臓止まったね。グレタかっこいい...なりたい...監督っていいな...同じ女性としてめっちゃ惚れました。

作品以上に、製作の経緯とか、グレタの作品に対する想いがとても好きでインタビューの記事色々を読んだ。

元々映画のタイトルは"Mother's and Daughter's"で350頁ぐらいあった脚本(上映するとしたら6時間かかるらしい)を120頁まで減らして"Lady Bird"が完成したらしい。

"Lady Bird"は主人公中心にストーリーが展開しているがあくまでも「母と娘の関係性」が核となっている。

このブログの最初にも書いたけどいわゆる青春映画には恋愛事情は付き物。この作品でも確かに主人公の恋愛事情は描かれてはいるが、グレタは

「恋愛を核にしなくても、少女の成長は描ける。本作には恋愛要素はあるが彼女(主人公)の人間性を描く上で重点は置かなかった」

と話している。その線引きは観ていてしっかりと感じ取れた。

「人間関係の中で、最も面白くて濃厚で複雑な関係。こんなにも面白い題材なのに、映画で語りつくされていない気がした」

そんなグレタの着眼点に感銘を受けたし、かつリアルに、親近感がわくような母親と娘の掛け合いを映画上で表してて本当に凄いなと思った。

何個かのシーンで度々主人公が母に対して悪気なくぽろっと出る言葉に「それは違うでしょ、配慮に欠けているよ」、「人生そう甘くないよ」と母が指摘する。指摘された主人公はチクリと何かが刺さるんだけど、それを無視して苛立ち含むレスポンスをする。当たり前に自分より人生経験がある母で言ってることは正論なのに反抗しちゃうクリスティンの気持ち。すごく共感。

 

何気ない台詞回しにグッとくるものがあるし、ユーモアにも溢れてて、norika_blue のブログにも書いてあったけどこの台詞たちを生み出したグレタは本当に天才。

norika_blue のこの映画についてのブログ、とっても好きなので観終わったら読んでほしい。のりの映画レビューはいい意味でバァーッとメモ帳に綴ったような純粋な感想が書いてあって、いい。

https://norikaeden.hatenadiary.com/entry/2019/03/16/110308

脱線してしまいましたが、

レディ・バード

ぜひ観て欲しい映画です。

 

 

 

 

 

〈追記〉 (mostly babbling, and spoiler alert!)

ティモシーいます。(はい。)

ティモシーが演じるカイル、あの謎っぽい不思議ボーイ感には惹かれるが、あの屑さ許せん!プロムに行くのにドアまで迎えに来ないし、花束もないし、自分の彼女が侮辱されてるのに擁護しないし...

わたくし完全ティモシーのファンなのですが、この映画ではルーカス・ヘッジズ演じるダニーが一番好きでした。

主人公がダニーにヘアローラーを貸して「なんか形がspermに似てるね」って冗談言ってるのにダニーにウットリしちゃって曖昧な返事しちゃって、変なこと言っちゃったかなってダニーが若干傷つくシーン。ダニーとキスできて主人公が帰り道に発狂しちゃうシーン。甘酸っぱくて可愛い。自分の好きな人とキスできて良い気分のままで居たいのに、家に帰って些細なことで母親に怒られる主人公。すごく感情移入したシーンだった。

二人がついに付き合って、草原で走って寝っ転がって星に自分たちで名前つけるシーン。メイキング映像にあったグレタディレクションの仕方も可愛かった笑

はいはい!そこでキスして!倒れて!もっかいキスして!って笑

 

主人公は素直なのに素直すぎる故?気に入られなきゃっていう純粋な気持ちで自分を偽ってしまうのが痛々しくもあり愛おしかった。タバコなんて吸ったことないのにカイルがよく吸ってるのを知って自分も昔から吸っていたとアピール、バンバン嘘つくやんって思ったけどね笑

あとカイルが最初に出てくるバンドでギター弾いて頭振ってるシーン、とてつもなくかっこい、あれは惚れます。

最後終わり方も素敵だよね。主人公が母に留守電入れてて、サクラメントを車で一人でドライブしたのを伝える。あの、二人を照らし合わせるようなカットの切り替え。二人の故郷に対する気持ちが伝わってくるような気がした、

高校を卒業して、やっと車の免許が取れて、行きたい都心の大学入学も決まって、冒頭の母との会話で言っていた「望んでいたもの」がようやく手に入った状態なのに、最後電話をかけている主人公の顔は少し悲しげだった。常套句だけど、失ってから気づくことって沢山ある。それを痛感してあの顔になったのかな、

 

長くなりましたが以上です。

自分が何回か観た映画を初めて観るであろう人におすすめするのって難しいね。

最後まで読んでくれてありがとう。

 

 


 

watashi no おすすめ映画

皆様こんにちは。三月もあと少しとなりましたがいかがお過ごしでしょうか。この度自称:映画好きな私はいくつか皆様におすすめしたい映画を紹介したく存じますが、突発的に思いついた企画(企画?)であり拙い部分もあるかとは思いますが優しい目で見ていただきたい。

 

インターステラー』/監督:クリストファー・ノーラン

【予告】https://www.youtube.com/watch?v=f7R5PtXCZU8

インターステラー』はfilm schoolに留学していたときの友達に「インセプション」が凄く好きな映画!と伝えたらじゃあ同じ監督の同タイトルもきっと気に入ると思うって勧められたもの。SF映画はそんなに好きじゃないから一回目は渋々と観ていたけどまあ~感動した。感動したなんてベタな感想は言いたくないんだけどこの映画に関しては観てる途中に泣いて泣いて数日間は余韻から抜け出せなくて色んな人におすすめした笑。

この映画ですごく好きなquoteがある。

"Love is the one thing we're capable of perceiving that trancends dimensions of time and space." 

(愛とは、時間と空間の次元をも超えて私たちが感じ取れるもの)

"Love"(主に家族の絆)をテーマとしている部分が個人的に刺さった部分だ。

鬼才ノーラン監督は観客をのめり込ませる要素、ストーリーの流れが天才的。宇宙空間の現象のリアルさが仇となってところどころの場面で専門用語だらけになったり、現象を理解するのに時間がかかるのが私的に難点だった。それでも、SF映画に馴染みのなくとも私はこの映画は強くおすすめしたいです。逆によくわからない理論物理学的な要素があるのが作品の壮大さを空虚なものでなくしているとても良い点だと思う。この映画を観て出てきた疑問を後から自分で検索して理解していくのもいい時間だ。私も実際色んなひとの考察を読んで構成の緻密さを知り、なおかつ物理の知識か豊かになった気がした笑。「時間」を使って、是非どうぞ。

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我らのティモシーも出てるよ!

 

 

 

 

パラサイト 『기생충』を観ました~映画ブロガーのようなブログ~

まさしくtypicalな映画ブロガーのように今話題の映画『パラサイト』を観た感想を書きます!!(プロっぽくてテンション上がる)(※感嘆符乱用注意報)

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まずこれから観ようかなと思ってる皆様に一言、観てこい!!劇場に足を運べ!!(this is not sponsored lol) 悲喜劇って呼ばれるほどあって、色んなジャンルの要素(ホラー、サスペンス、コメディーなど)が含んでいて、私はあまり韓国映画を真剣に観たことなくてポン・ジュノワールドがどんなもんかよくわかってなかったけど(okjaはすでに観たけどそんなポン・ジュノワールドを感じられない気がする)、今回『パラサイト』を観てこれがポン・ジュノワールドか、なるほど!ってなりました。この独特な世界感に浸りつつジェットコースターのような恐怖感、愉快さを体験したいひとは是非映画館で観て欲しいです。この映画は日本でも一か月前ぐらいから話題になってるからレビューを見ずに映画館に行くのは難しくて、私自身もある程度の内容は把握してしまっているつもりだったけど、それでも作品後半の予想外の展開にびっくりするしシンプルに観てて面白かったです。

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文章力低めではありますが

①観る時の注目ポイント

②なんでこれほど話題になったのか(個人的意見)

③個人的な推測/不思議に思った点/気に入ったシーン等(若干ネタバレ)

の三点を紹介します

 

1.Props(小物)・セットに注目

ポンジュノの映画って一体何が凄いかって、色んなサイトでも紹介されてますが空間設計の緻密さ。私が言葉ですごいすごいって言っても伝わらないと思うので、メイキング映像を見たら分かると思います。

https://youtu.be/osl0RfExcks

もう一つすごいのがセットに置かれている小物がただリアルさを醸し出すためだけではなくメタファーとして置いているのも面白い。ストーリー展開に注目するだけじゃなくて、セット、小物にも注目すれば後からなるほどって思える部分が多いと思います。そうすれば無意味に思えるショット(ex. 身の回りのものにカメラを向けたショット)にこんな意味もあったのかと、一種のアハ体験のようなものを味わえると思います。

 

2.なんでこれほど話題になったのか

なによりも私がこの映画最高って思えたのが、ここまで深く考えさせられる映画って今まであったか?!って思えちゃう部分です。

私は映画を勉強し始めて間もないから(そもそも頭がそんなに良くないから)分析できるほどの力量はないけど、こんな私でも「このモチーフなにか暗示してるな」とか「三つ前のシーンはここに繋がるのか」とかいろいろ気付けるところがありまして、

この映画に関しては、映画館を出て友達と「このシーンびっくりしたね〜」と生半可な意見を交換するだけじゃなくて家に帰ってシーンを思い返して考察するともっと楽しめるものだと思います。もちろんコメディー×スリラーの映画としてシンプルに楽しめるが、十分な韓国の社会問題についての知識があったり、分析力が高い人だったらより楽しめる内容だったかなと思います。余談なんだけど、同じ「格差社会を描いた映画」、『ジョーカー』を観た後「ちょっとようわからん映画やったな〜...」って思ってしまって(笑) 「格差社会を描いた映画」以上に深みのある作品だということは分かったけど、あまりにもその奥深さが深すぎてちょっと私では理解できない部分が多かったわけで。その点『パラサイト』は分かりやすかった!とは言わないけどよく噛んだらちゃんと消化できる内容です。なんかその絶妙な物語の伝え方?さすが脚本賞もとった脚本だけあってポン・ジュノワールドだな〜って思いました。

 

3.個人的な推測/不思議に思った点/気に入ったシーン等

(ⅰ) 日本人には理解できない資本主義の実態

この映画のサブタイトルは「半地下の家族」とあるが、そもそも半地下ってなに?ってなりますよね。調べたら、半地下っていうのは元々北朝鮮との戦争後に造られた防空壕を住居に改築した、賃金の安い物件で現在の韓国人でも住んだことある人は多いらしい。安い物件だけあって湿気が酷くカビ臭く、しかも下水道より低いところにあるから上の写真みたいにトイレがあんなとこにあるみたい。作中の貧乏家族はまさに底辺の暮らしをしていることが分かりますよね。

あとピザの箱。韓国ドラマをよく見る人は分かると思うけど、最初らへんのシーンで貧乏家族全員がピザの箱を作っててそれを内職と呼んでいる。内職ってアルバイトのことで韓ドラを観ていると主婦が家でやってる(個人的な)イメージがあるけど、それを家族全員でやってるっていうのは家族が怠け者だからとかじゃなくて、どれだけ普通の職に就くことが難しいかが分かる。だから家族は必死に全員で金持ち家族の下で働こうとしていたのだろう。

加えて、貧乏家族のお母さんが金持ち家族の家政婦になるため娘のギジョンがサービス業者を装って金持ち家族の母(ヨンギョ)に個人情報を聞き出すシーン。そのシーンを観たとき聞き出した情報を使って大金を奪い取ったりするのかなと思ったけどそんなことなく、四人全員が金持ち家族の元に就いたあとは家族がキャンプで出掛ける隙に豪邸のリビングでお酒を飲んで団欒するぐらいだった。家族のゴールはあくまで職を手に入れることであり、贅沢がしたいわけではなくて「普通」の生活が欲しい、そんな気持ちが伝わってくるような気がしますし、それほど韓国社会は苛酷な競争社会であることを示唆しているような気もしました。

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(ⅱ) 物理的に高・低を描く点

『パラサイト』は貧困層と富裕層を描いた作品だけど、その格差を視覚的な方法で提示しているのが面白かった。貧乏家族が住んでいるのは半地下だが、ギウが初めて家庭教師として家に訪れたときに分かるように金持ち家族は丘の高いところに住んでいる。こうして建物の構造が物語そのものに関係していて、監督のロケーション設定の凄さを感じられる。

特に洪水のシーンは強烈で、大雨の所為で家が浸水し被害を受ける貧乏一家に対して、韓牛入りのジャージャー麵を食べていられるほど呑気な金持ち一家との対比が見られるが、ここでは作中に表わされている高・低の圧倒的距離感が分かる。この洪水シーンのショットの切り替えも才気溢れていて脚本だけじゃなく編集にもセンスを感じた。

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(ⅲ) 「インディアン」について

映画内でちょいちょい出てきた「インディアン」というワード。金持ち家族の弟が弓矢や被り物だったり「インディアン」グッズを集めて成りきろうとしているのをヨンギョ(母)がギウやギジョンに紹介するとき、繰り返しそのワードが使われている。ヨンギョは人前では上品さがあり、裕福層に相応しい雰囲気だが、差別用語をリピートして使うのには違和感を持たざるを得なかった。さらにヨンギョが度々英語を混ぜて喋る点もおかしかった。ここに韓国の格差社会の話から離れた白人主義やアメリカの資本主義のような要素も垣間見えてすごいなと思った(語彙力)

 

以上超個人的意見でした。

ここでもっと理解を深めたい人の為に私が紹介したい動画を載せておくので、観終わった人はぜひぜひぜひURLにタップしてくれさい!話が広がりすぎてしまうから触れなかったけど作中の「臭い」についても分かりやすく説明しているので。映画を注意深く観てる人ほどハッとするところが多いと思うし、絶対もう一度観たくなると思います。(私はある特定のシーンを観るのがちょっとキツイんでまたネトフリに出たらゆっくり観ます)

【1分映画批評 さん】

https://youtu.be/-eqFvG9hYEw (全然1分じゃないけど笑)

【コンテンツ全部見東大生 さん】

https://youtu.be/m8RJdb2QvP8 

 

 

P.S.

個人的に『パラサイト』以上に他人のレビューだったり解説を読むのが楽しい作品はなかったです。ポンジュノのセンスに感動し、他人の分析にも感動しながら、自分の知識の無さの悔しささえありました。もっと勉強して視聴回数多めの解説動画並みに長けた分析力を身に着けたいと思った!

今回は今までとはスタイルが違う感じだったけど、わたしの乏しい語彙力で分析力のお披露目会みたいになっていたらすみません。でも少しでも皆様の映画を観る視点に変化があれば嬉しいなと思います!

 

 

 

”人生はサディスティックなコメディアンに創られた喜劇だ”- cafe society

映画で(音楽でも)セリフ(歌詞)でタイトル(曲名)が出てくるときって「おっ」ってなりませんか?

昨日と今日かけて見た"Cafe Society"でもナレーターのセリフのなかで"Bobby moved more and more gracefully among the rich and famous and learned the in and out of cafe society"とタイトルが出てきて良いなと思った。

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自分の映画魂(なんじゃそりゃ)に火をつけてくれる映画に出会えました。

同じ監督でミッドナイトインパリが大大大好きなんですけど、なんで早く観ておかなかったんだろう!:(

2016年公開の映画なんだけどうわ〜映画館で観たかった〜ってなりました

将来自分の映画館を建ち上げたら確実にカフェ・ソサエティはカムバックとして上映します。

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簡単にsummarizeすると、

ニューヨーカーであるボビーは自分の父の仕事を受け継ぐのが嫌になり映画業界の有力者である叔父に頼って本場のロサンゼルスに移り住む。夢見る青年ボビーは叔父の元で雑用係として働き、そして叔父の秘書であるヴォニーに恋をする。が、ヴォニーには思いがけない恋人が居た... ロサンゼルスとニューヨークを舞台にしたロマンティックコメディで一人の青年の人生を描いた物語。

 

1930年のこんなに生き生きとしたハリウッド、ロサンゼルスの豪勢な雰囲気をすごい感じられてたった一か月半しか留学してないが、観ていてピンとくる場面があるのが楽しかった。

登場人物のキャラクター性も最高。特にBobbyの兄でありギャングスターのBenが姉の隣人が姉の飼い犬を殺すと脅してることに腹立ててその隣人を殺しちゃうその潔さが面白かった。あくまで主演はジェシー・アイゼンバーグとクリステン・スチュアートだが、登場人物一人一人のライフスタイルが分かる。キャラクター性を大事にしているんだなと。

”society”って題名にある通り、煌びやかな社会、humbleな社会、裏社会、その中の人々関わりが芸術的に画面に浮かび上がって、視覚的にも楽しく内容的にも面白い映画でした。

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追記

 

衣装!音楽!ステキです。

ヴォニー(クリステン・スチュアート)が初めてボビーが経営するNYのナイトクラブに訪れたときあまりに美人&ゴージャスな衣装に皮肉さえも感じましたねえ。高そうなドレスを身にまとったヴォニーに対してボビーが、自分が一番なりたくなかった姿になっているじゃないか!とショックを受けるシーン切なかった、、

あと私もジェシーに早口で口説かれたい!

以上です。

(仮)やっと載せる感想 "The Shining"

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ついにシャイニングを観まして2ヶ月ほどが経ちました。10/14に書き始めてやっと載せた、、、ほんまにprocrastinationもほどほどにですね。

母にこれは観るべき映画だと散々言われ、film schoolでは何回か授業中に取り上げられ、観なきゃ!という気持ちが強かった映画。ネトフリで観れました(いまアマプラでも見れるっぽいです)

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キューブリック監督が手掛けたこの作品の撮影期間はなんと約5年(めっちゃ映画評論家みたいなこと言うてる)。撮影期間が長いことで有名な監督で、ジャック(主人公/ホテルの管理人/一家の父)が白いドアから顔を覗かせる有名なシーン(怖いので画像は載せません)は約190回撮り直して一分にも満たないシーンを完成させたらしく、、

つまりですね!もうとにかく色んな要素においてこだわりが強めなのよ!

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シャイニングを観終わった瞬間、このシーンはどういう意味だったのだろう?どういう撮影法だったのだろう?、と色んな疑問が浮かび上がってすぐにグーグルを開いた。

出てきた記事の中でとっても共感できたのが「キューブリックの映画は一枚の写真としても通用するような、非常に美しくインパクトのある映像が印象的」だということ。

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色の使い方、シンメトリーな画面、一点透視図法、などの技術と時間をかけて細密に作られた作品だから確かに1つ1つのシーンがインパクトが強く、画面の細部まで記憶に残りやすい。

現代のホラー(イットとかアナベルとか)においては怖いっちゃ怖いけど「これ絶対CGやん」「こんなんありえんし」ってすぐ思っちゃうし「このシーン撮るの大変そうやな〜」って考えてしまってリアルの世界と映画の世界が完全に剥離されている気がする。

それに対してシャイニングは人間の狂気、幻想、恐怖を画面からしっかり伝え、観客の脳にこびりつくようなシーンが多い点ですごく怖いなと思った、個人的にね。そして何よりもデジタルな技術が発展していない時代に作られたにも関わらず、チープな要素まったく無くてとてもリアルな演出が多い。

観終わったとき中学生の時にバイオハザードを観た時以来初めて映画のせいで夜中トイレに行くのが怖いと思ってしまった(笑) 

でも名作って呼ばれるわけは怖さとかホラー要素からではなく、キューブリックにしかできないユニークな演出があるからこそなのかなと。 

正直めちゃくちゃ怖いわけではないけど映画好きなら絶対観るべきなホラー映画やなと思いました。

 

追記

film schoolでシャイニングが取り上げられた分野の中で1番覚えてるのが撮影技術の分野。シャイニングはすべてのシーンをSteadicamを使って撮っている。台車(ドリー)やクレーンなどを使わずにカメラマンが体にカメラを装着(?)した形で撮影する方法。シャイニングをやっと観た時それの効果を存分に感じた。狭い廊下を三輪車でダニーが走るシーン。得体の知れない怖さが襲ってくるかもしれないというドキドキ感があり、同時に撮影方法すげえ!って素人目線だけど感じました。

(仮題)ブログを始めたわけ

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映画「わたしを離さないで」

 

ブログを始める上で一番お題としてやりたかったのが映画紹介。

春学期に授業外で鑑賞した作品について、自分の見解を述べるいわゆる読書感想文的なレポートが課題として出されて、その時に映画版のNever Let Me Goを取り上げた。さすが私、ギリッギリでこちらの課題を仕上げました、先生ごめんなさい。まあこの話は置いといて、Never Let Me Goは観たときに色んな感情が自分の中で沸き起こった。この映画が”好きな映画”といえるかは分からないけど”印象に残る映画”には確実に自分の中でカテゴライズできる。そんな作品の論文を、研究しながら(といっても関連する資料を読み漁るだけ)書くのは楽しかった。提出ギリギリやったけど。なのでブログ上でもいろんな映画についての感想文を書きたいなと。

プラス、のりかのブログを読んでてわたしもやってみたいなと思ったんだ。Shout out to my girl! Love u tons;) 

https://norikaeden.hatenadiary.com/

ぜひ彼女のブログをcheck it out ↑

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インセプション



・映画はいい暇つぶし

・映画は観る人をinvolveさせ現実逃避をさせてくれる

・映画というものは娯楽のためにある

ホラーであってもバッドエンドな話であっても、映画の設定とは似ても似つかない自分の人生から目を逸らしてちょっとした刺激を与えてくれる力があることにおいて映画の存在価値があるのかと思っていた。

前まではこんな考えで、映画を観ながら主人公に感情移入して物語を重要視していたけど、アメリカ留学のfilm studyで映画の観方が本当に変わった。

"映画"って何のためにあるのか正解は無い。興行収入を気にして大衆ウケに力を入れる監督がいたり(ex. アベンジャーズ)、人種差別に関するような示唆的な作品を作る監督がいたり(ex. ゲットアウト)、画面上の美しさを伝えるのを大事にしてる監督がいたり(ex.ムーンライズキングダム)、本当にさまざま。映画においての意味を考えながら、「この作品はなにを伝えたいんだろう?」って疑問に思いながら観ることの楽しさを留学のおかげで知った。

映画の物語だけではなく技術(撮影法、照明、編集、フレーミング、衣装選び)をもappreciateできるようになった。

今回の留学でこれから映画関係の仕事に就いて有意義な人生を歩めるかどうかは分からないけど、映画の観方を変えてくれたのは財産になったと思う。これからの私の映画人生が楽しみ。

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過去(といっても三週間ほど前)に載せた二つのブログ(ラブレターシリーズ)(勝手にシリーズ化)をお母さんに読んでもらったら感想として「自分の意見を伝える場を持つのってすごく大事なことだからこれからも頑張ってね」って言われてそのほかにも割とガチな感想を言ってくれてびびった。私の文章にどんな価値があるかは分からないけど、これからも更新していこうというモチベになりました。お母さん貴重な意見をありがとう。

そして私の文章を読んでくれた方々、ありがとうございます。